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セリア郊外に地下貯水池跡がある。奥行きは100メートルを超え、幅も60メートルほどで、高さは約10メートルもある。この巨大な空間を、大理石円柱が整然と並んで支えている。
都市建設のために作られ、長く放置されていた。割れた天井から差し込む月の光と、絶妙な湿気が、独特の不気味さを醸し出している。
「オン・バサラ・タラマ・キリク!」
ここに、黒いローブをまとった一団がいた。
祭壇を作り、生贄を捧げて、全員で呪文を詠唱している。そのリーダーらしき人物が、11人の人間を殺して、その血で魔法陣を描いた。
「おお!」
魔法陣が青白く輝き、薄い紫色の霧を発生させる。見守る集団から、一斉に、感嘆の声が漏れる。
「叶った!」
リーダーの男が叫んで、ローブのフードを外して素顔を晒した。金髪をオールバックにすることで、鋭く青い眼光を誇示しているようだった。まさに、大衆を魅了する精悍な顔立ちである。
「今こそ、我が誓いが、我らの願望が成就したぞ!!」
男は魔法陣の中に進んで、そこに浮かんだ紅蓮の槍を握る。
「この槍は、一度、我が手を離れれば、標的の心臓を必ず貫く。もはや我に敵はなし!!」
「おお!」
感嘆は歓声となった。しかし、そこへ水を差す者がいた。
「大変です。帝国の犬が地上を覆っています」
歓喜の頂点で、頭から氷水を被せられたように、地下の世界は静まり返る。
「好都合だ。手間が省けたぞ。飛んで火に入る夏の虫よ――!!」
男は豪語して豪笑する。
「ふふふ、全通路には無数のトラップや魔術結界が仕掛けてある。我が地下要塞を、とっくりと堪能してもらおうではないか!」
「おお!」
引いた潮が寄せるように、再び活気を取り戻す一同。
その時、脇の簡易トイレのドアが開いた。
「おいおい、汚れ酷いぞ。クエン酸ないのか?」
オーギュストが、左手でズボンのベルトを巧みに締め、右手でトイレブラシをぶらぶらさせながら出てくる。
「貴様、何処から入った? いや、何時からそこに居た?」
開いた口が塞がらぬ風情で、矢継ぎ早に質す。
「あそこの入り口から正々堂々と、そしたら、気取った女に儀式の前に、掃除しとけって言われて――」
トイレブラシを振り回して説明するから、飛沫がそこらへんに飛び散る。慌てて、周りから人が消えていく。
「あんたもさ、悪巧みするんなら、もうちょっと慎重にやりなさいよ。折角の金庫も中身確認せずに鍵をかけたら意味ないだろう?」
眉をしかめて、諭すように喋る。
と、その背後の簡易トレイで、裸の女性が、どさりと倒れた。
「マリア……!?」
裸で気絶している女を見て、男が愕然と声を漏らす。
「あれ、お前のか?」
オーギュストが、トレイブラシで指す。
「トイレ掃除を手伝えというから協力してやったんだが、儀式があんまり長いんで、ついつい暇潰しに頂いたんだが、拙かったか?」
悪ぶれることなく言い放つ。
「……」
男は真っ青な顔に青筋を浮かべ、わなわなと震えている。
「まあ、しかし、締りもあんまり良くないし、堪え性もなくすぐ漏らすし、まああんまりいいもんじゃないな。折角掃除したのに、またやり直しだ。……やれやれだぜ」
わざとらしく顔を顰める。
「貴様を殺す!!」
男が槍を肩に担いで、乾坤一擲、投げる――が槍は手を離れない。
「な、なぜ、飛ばぬ!?」
あまりの驚きで、頭から憤怒も消し飛んだようだった。
「あんまり、もたもたしていたから、少し手伝ってやろうと思って、魔法陣に追尾機能をオフにするよう設定し直してやった。危ないからね」
オーギュストは、舌を出しておどける。そして、急に声のトーンを落としていく。
「馬鹿な……」
「馬鹿なのはお前だ!」
なぜ、与えられた運命の中で生きようとしない?
なぜ、地に足をつけて生きない?
なぜ、楽をしようとする?
なぜ、俺の定めた法に逆らう?
「貴様などに従うものか。我らは我らが神と共に新たな世界へ行く」
男は宣言し、交渉の可能性を自ら消した。
――剣では相手に分があるだろうが、こちらは幸い槍。慎重に距離を保てば勝機がある!
と、彼は本気で思っている。
「ならば死ね」
オーギュストが、挑発するように、トイレブラシを、前に衝いたり戻したりを繰り返す。そのたびに、飛沫が男の眼前をかすめて、やや大げさに男は仰け反る。
「戦士の眼前に無礼な!」
ついに、我慢し切れずに紅蓮の槍を衝く。
槍先は、ロングジャケットの上を滑って、脇をかすめるように通り抜ける。
オーギュストは半身となり、腕と背中で槍を挟み込んだ。
男は懸命に槍を引き抜こうとするが、全く動かない。
そして、槍の側面を、独楽のようになめらかに一回転して、一挙に男に迫る。
「ひぃ!」
逃げようとするが、間に合わない。
トイレブラシが、男の頭を直撃して、その半分を吹き飛ばした。
「降伏しろ――」
男の死体を踏みつけ、残った集団を見渡して、強い口調で言う。
しかし、その声に逆らう者はいない。もはや誰もが腑抜けである。夢から覚めたように熱を失っている。
「抵抗は無意味だ!」
用意した文言を言い終わると、緊張を解いて、トイレブラシを床に捨てる。
その瞬間、集団の影から、小柄で貧相な男が独り飛び出してきた。
「ついに貴様を見たぞ!」
その小柄な男は、左右にそれぞれ斧を投げた。斧には目があり、その瞳は、しっかりとオーギュストを捉えている。
「その命もらった!」
気合の声を発して、自身もナイフを抜いて走った。
小柄な男は思考する。
――大きく弧を描いた斧を、奴は先ほど奪った槍の先と尻で、叩き落とすだろう。ならば、その隙に、死角の足元から懐に飛び込めば勝てる!
「へえ?」
だが、思惑はいきなり外れる。意外にも、突然敵が眼前に迫っていた。そして、苦も無く腕を掴まれると、そのまま引っ張られていく。気が付いた時には、顔の左右に斧が食い込もうとしていた。
「全員動くな!」
「禁魔術法違反で全員を逮捕する」
この直後、親衛隊がけたたましく突入してきた。そして、手際よく、残った全員を捕縛した。
「全員、さらし首にしろ」
オーギュストは地上に繋がる階段を上りながら、隊長のナン・ディアンに命じた。
「御意」
「さらに、身元を調べて、三親等以内のものをすべて死罪としろ」
「……御意」
ナンが、生唾を一つ呑み込む。
「しかし――」
足取りが重くなったナンを追い抜いて、ランがオーギュストの後ろについた
「まるで師匠に殺されるために、現れたようですね」
ランの何気ない言葉に、突然、オーギュストの足が止まる。そして、徐に振り返ると、無表情でじっとランを見た。
「……」
ランは、頬がぴくぴくと痙攣するのを覚えた。
「無駄口はいいから。戦利品の管理を怠るなよ」
「御意」
ナンとランは、階段上で跪いて拝命した。
二人を残して、一人地上に出る。
外はまだ未明である。眼下に広大なエリース湖が広がっていた。
「えっ……!?」
目の端で捉えた湖面に、白い月の影が映っていた。一瞬、それが人の姿のように見えた。
『あなた、頭がいいのね』
『そんなことはないよ。だって君の方が……』
『嫌味で言ったのよ』
『……』
遥か遠い記憶が、オーギュストの足を止める。
――俺はあとどれくい生きれば、君に追いつけるのだろう……。
第69章 杯盤狼籍
【神聖紀1234年10月セリア】
星が降り注ぎそうな夜だった。
湖から吹く風が、高く薄い雲を蜘蛛の糸のように吹き流している。帝都セリアから夏の熱気が失われつつあった。日が沈むころには肌に涼しさを感じる。
天空はさぞ寒かろう。まるで、星たちは震えるように燦々と輝いている。
ローズマリーは、コーヒーカップを両手で抱いて、湯気が消える先をぼんやりと眺めていた。
「本当にいい月だね」
「ええ――」
ローズマリーの膝の上に、オーギュストの穏やかな顔がある。彼もまた安らかな表情で、遥か彼方を見上げていた。
「ええ、そうね」
無限の星が散らばる満天の空を、孤高の月がゆっくりと船のように進んでいる。
二人には不釣り合いな小さな中庭である。木々も花もどれもありふれたもので、気ままに伸びている。庭にたった一つのベンチは、雨で塗装がはげている。そこで、膝枕をして、されて、二人は、言葉少なに長い時間を共有していた。
「月が横を通るときには、星たちも驚いて瞬きを止めるのかしら?」
「実はね――」
ローズマリーの声は、秋の虫たちの声を伴って、歌のように静かに流れている。オーギュストは、心の奥に仕舞い込むように、そっと瞼を閉じた。
「星たちは、月よりずっと遠くにいるんだよ」
「ふふふ、また」
ローズマリーは、「からかわないで」と無邪気な声で笑う。
「おかしいかい?」
「ええ、あなたらしいわね」
膝の上へ視線を落とすと、口に手を当てていた手をそっと下ろした。それから、優しくオーギュストの漆黒の髪を掬い上げる。
「この世界が、天と地に引き裂かれて、どれくらいの人が、この満天の空に、願いと祈りを捧げたのでしょうね?」
その寂しげな声は、どこか秋の風のように、憂愁を感じさせた。
「地上は叶わぬ願いと届かない祈りに満ちているよ」
また夜空を見上げる。
「ええ……きっと、そうね」
その瞬間、三つの流れ星が落ちた。
「ああ、いっちゃった……」
切なげな声とともに、思わず手を伸ばし、虚しく宙に泳がせてしまう。
オーギュストは、瞳を開いた。赤い瞳が、散り逝く星々に劣らぬ光を煌々と発している。
「マリー」
「うん?」
「俺は当分ここには来られない」
「そう」
静かに頷く。
「俺は戦士(おとこ)に戻る。他人の愛する子を、他人の敬う親を殺さねばならない」
「……」
「君の、君の一族が背負う業をすべて引き受けて、俺はこの大地に這おう。君は聖者として、あの天で待つ星たちのもとへ登ってくれ」
「ええ」
ローズマリーの頬を伝った滴が、オーギュストの乾いた肌を濡らす。
暖炉に火が入った暖かな部屋で、母親が、幼子に絵本を読み聞かせていた。
母親は、絶えず、薪の残りを気にしている。
急に涼しくなってきたので、早々に暖炉を用意させた。しかし、準備は整わず、十分な薪をまだ集められていない。この一夜、室内を暖め続けられるか、彼女は、この世の終わりを思うように悩んでいた。
「平和とは、言葉さえいらぬ人々に宿るものなのだ――」
ページをめくる。
「幸福とは、すべて許し合える愛だけが呼べるものなのだ……」
「……眠い」
子供が目をこする。同じ年の子よりも、小柄で痩せている。
「ベッドへ行きましょうね」
ティルローズは、子供を抱きかかえて寝室へ向かった。ベッドに寝かせて、布団を首までしっかりかける。ランプの灯りを少し弱めてから、お休みのキスをし、足音を控えて居間に戻る。
と、窓際に、ワインレッドのシャツに、黒い革のロングジャケットを着た男が立っていた。
「あら、来ていたの?」
肩にかかった豪奢な黄金の髪を払う。
「ああ」
男はグラスに酒を注ぐ。
「熱いな、この部屋」
そして、窓を開けて顔を外に出した。
「気に入らない?」
ティルーズは、汗の滲む眉間を険しくして、腰に手を当てながら、オーギュストを睨む。
「否」
オーギュストは、桟に腰を引っ掛けて、足を交差させる。そして、ティルローズへグラスを掲げる。白い夜衣姿が、黄金色の酒の中に溶け込むように映る。
「ここはどうだ?」
オーギュストの指示に従って、ティルローズは、息子のカール6世を連れて、郊外の森の中に新築された城に移っていた。正式には、ティアクロス宮殿と呼ばれている。
「まだ、手が行き届いていないわ。見て、薪が少ないの。それに……」
指先で、前髪を払って、ため息を一つ落とす。
「直になれる。ここは森の精霊の加護を受けているから、生命力を高める」
「ええ、あなたを信じるわ。……私にはそれしか選択肢がないのだから」
運命と戦い続ける勇敢な女性の顔に、微かに弱さが滲む。一人で背負っていた重荷を無条件で共有する存在に、彼女は頼もしさと安らぎを感じてしまう。
「すまない。君にばかり」
「止してよ。らしくない、ことを言うのは……」
思わず、涙が浮かび、鼻を一度すすっている。そして、震え出そうとする身体を守るように、きつく左肘を掴んだ。
「ほんとに、止めて……」
潤む瞳を隠すように、首を傾げて前髪を垂らす。その隙間から、その真剣な表情を見据えた。
「もうアルテブルグへ遠征に出掛けるの?」
一見普通のジェケットのようだが、戦闘用に愛用しているものだ。表面は対魔加工が施されてあり、内側にも無数の武器が隠されている。
また一人残されることを思って、否定しがたい寂寞感が胸につのる。
「否」
淡々とした声で答えて、微かに首を振りながら、徐に近付く。途中で、テーブルにグラスを置いた。
「その前に、少し掃除をしなければならなくなった。約束の時間に、まだ間があるから顔を見に寄った」
オーギュストの腕が、細い腰を抱く。ティルローズは、そのまま身を任せて、泣き出しそうな顔をその逞しい胸に添わせた。微かに聞こえる鼓動が、心を温かくさせる。
「何かあったの?」
「大丈夫」
耳元で優しくささやく。
「あの子に仇なす者どもを征伐し尽くす。それだけのことだから」
「ええ」
ティルローズの瞳が冷たく光る。おそらく、カール6世は、生涯一度も戦場に立つことはできないだろう。そう思うと、焦燥感が身を焦がす。
「女だろうが、子供だろうが、容赦はしない。どんな犠牲さえも厭わない。魑魅魍魎を一掃できるのなら、街どころか国さえも焼き滅ぼそうとも構わない」
「サリスよ、永遠たれ」
呪文のように、密やかに呟く。
「サリスに栄光を」
二人は唇と唇を強く押し当てて、熱く口付をかわす。まさに、二人だけの密約を強く心に刻むように激しい。
そして、オーギュストは唇を耳元へ移す。
「我が最愛なる妻よ。俺の息子を頼む」
「ええ、いいわよ」
答えて、ティルローズは、もう一度キスをねだろうとする。しかし、続く予期せぬ声が、時の流れさえも凍らせる。
「決して我が意に背かせぬように」
「わ、分かっているわ……」
刹那、ティルローズの全身から汗が噴き出ていた。
「愛しているよ、俺のティル。俺だけのティル」
オーギュストは愛おしそうに、黄金の髪を何度も撫で下ろす。
――こ、こわい……。
息が詰まる。心が戦慄している。ティルローズは、呼吸さえも、ぎこちない自分自身に気が付いた。
宵の口、サリス帝国最大の貴族ルブラン公爵夫婦とロックハート将軍夫婦が、グランクロス宮殿の三郭内を歩いている。
三郭内には、オーギュストの寵愛を受ける女性たちの御殿が建ち並んでいる。
赤瓦に青瓦、さらに、金や銅さらに鉛の屋根などなど、どれも絢爛豪華な装飾で満ちている。華やかさでは、宮殿の象徴である黄金の浮遊塔さえも凌いでいるだろう。
週末には、何処かで必ずパーティーが行われ、その来賓の数を競っている。この夜は、ミカエラのパーティーが催されていた。
「クリスティーにアポロニア、揃いもそろって強敵ですなぁ。あははは」
「お笑いにならないでください」
先を夫たちが歩く。
「アポロニアにカイマルクを奪われれば、軍内部での小官の立場もなくなります。そうなれば、益々アーカス勢がのさばることになりましょうぞ」
髭を震わせながら、苦々しい声で告げる。それに、ルブラン公マテオは扇で顔を遮った。
「そこで、義理の姪を上帝陛下に献上し、絆を深めたいと?」
義理の姪とは、ランの姉、リタ・ベス・ロックハートのことである。
「はい、彼女はカーン公爵家の末裔です」
「ふーん」
マテオは唸る。速断を避けているようだった。
それに、ロックハート将軍の鼓動は否応なく速くなっていく。今、この大貴族に取り入り、望みを繋げるしか方法はない、と彼は必死に思っている。
「話は分かるが――」
マテオ自身も、オーギュストの歓心を買うために、美貌の従妹を差し出している。さらに、後宮からエマを譲り受けて、正妻としている。オーギュストとのそういう関係で、由緒正しい家を守り、かつ、自らの権勢を高めている。
「上帝陛下のお側には、我が従妹アメリアをはじめ美女が揃っておられる」
「はい、存じております。ですから、その花園に、我が姪をお加え頂き、彼女にも至高の喜びを与えていただきたいのです」
思わず、体を寄せて、鋭い眼光で熱弁をふるう。しかし、大貴族は動じない。
「上帝陛下におかせられましては、今はいたくメルローズ様に、ご執心のご様子であらせられる。さらに、最近親衛隊から一人お召し上げなされたとか。時期が悪かろう」
「そこを是非、公爵閣下にお口添え願いたいのです」
「そーおーよーのぉー」
何処までも、マテオは煮え切れない。この乱世を生き抜く、これも彼の処世術なのだろう。
ここに至って、頼るべき相手を間違えたかとロックハート将軍は内心歯軋りした。
「見よ――」
ロックハートのとの距離が空いたのを横目で確認して、マテオは、いきなり扇を閉じて、周囲の色とりどりの屋根を指した。
「七殿五舎と言うが、定員をオーバーしている。今度は堀を埋めるという話だ」
「はい」
「逆に余っておられるのだから、一人お譲り願えばよい」
「はあ」
意味の分からない話に、思わず落胆の溜息をもらす。
「なかなか良いものだぞ。あのお方が攻めたものを、攻められるというものは。がははは」
今度は、勢いよく扇を広げて、盛大に仰いだ。
「そういうものでしょうか……」
ロックハート将軍は、今一納得できない。
一方、彼らの少し後方を、夫人たちが歩いている。
「難しいでしょうね」
エマが即答する。それに、ローラは、夫の嘆きを思い、顔を曇らせた。しかし、内心はホッとしている。何も好き好んで、姪に苦労させる必要はない。
「後宮は伏魔殿です」
「……」
その声の深刻さに、胸の奥がドキリとなった。
「寵愛を受け続けるには、大変な努力と才覚が必要です」
「はい」
何となくだが想像はつく。地方の社交界でも人間関係は大変なのに、この宮殿では自分の想像など及ばない出来事の連続であろう、と率直に思う。
「今最も寵愛されているのは、エヴァ・ディアンでしょう。彼女は娘とともに夜伽を受けているとか。それに、ローズマリー様もティルローズ様も、何度も共にお相手なされているとか」
「そうなのですか?」
驚きで、心臓が破裂しそうである。
「あなた方に、その工夫が思いついて?」
「……」
冷たい声が、ローラの胸を切り裂き、咄嗟に言葉を返せない。
もう十日です( ´ー`)フゥー...
まだ泥が残っています。
よくよく考えると、自分は勘違いしていました。
貴樹は仕事を辞め、恋人にふられて、どん底状態だと。
でも、よく映画を見たら、独立して順調な滑り出しのようです。
花びらを見て、ふらりと散歩に出かける精神的余裕もあるようです。
明里の方も、結婚が決まる前はいろいろあったでしょうから、
(なんせ二人は似ているという設定ですしw)
ようやく二人とも『大丈夫』に成れたからこそ、あの日あそこで再会できたのかもしれませんね。
しかし、私はエロ作家ですので、
以前は明里の心に他の誰かがいて、2番手でもいいと思っていのに、結婚して欲がでて、
「俺はお前の亭主だぞ」などと暴走して、一年で破局なんてのを妄想してしまいますw
なんせ二人は似たもの同士ですしw
さて、水野理紗です。
できれば、彼女の話も書きたいなぁと思い、少し考えてみました。
映画では、身勝手な恋人に振り回されて、怒りの三行半に見えましたが、
漫画では、自責の念のようなものも見えました。
彼女にとっては貴樹は、星の王子様だったのでしょう。
初めての男が、モテモテの超イケメンでしたからね。舞い上がっても無理はないです。
現実は超面倒くさい、悩める若者だったわけですけどね。
彼女と貴樹が、よりを戻す場合を考えてみました。
彼女には新しい趣味でも始めてもらい、そこで2~3人の男と知り合ってもらう。
そして、彼らとのデートを重ねる中で、生身の男の声を知っていく。
しかし、貴樹との生活にあったドキドキ感がないことに気が付く。
その時、貴樹が偶然ではなく、自らの意志で会いに来れば、ハッピーエンドなのではないかと妄想します。
まあオリキャラをだすのは、さすがにやり過ぎだと思うので、書くのは断念しました。
少しだけ考察します。
秒速5センチメートルに影響を与えているのは、おそらく『月とキャベツ』と『国境の南、太陽の西』ではないだろうか?
二つともずいぶん前に見たので、よく覚えていないが。これらと比べると、秒速5センチメートルは、物語としてかなり生温い、と言えよう。
『月とキャベツ』のヒロインは、すでに死亡していた。(ヒロインのダンスが悲劇的に下手だったのは、ご愛嬌だろうw)
主題歌の歌詞の通りなら、明里も高校生ぐらいで死んでいることになる。
『国境の南、太陽の西』は、もっと苛酷。
離れてはいけなかった幼馴染、高校時代の恋人への裏切り、転職、幻影、そして、悲惨な姿などなど。
秒速がジムなら、これはガンダム。
秒速がブロンズなら、これはゴールドという感じだろう。
しかしながら、秒速5センチメートルは、いい意味でストーリー的に未完成であり、その登場キャラは無色透明である。だから、視聴者はその美しい背景の中に自分の過去を投影してしまう。そして号泣してしまうのだろう。
この仕組みを意図していたのなら、監督は天才である。
書き上げてから1日経ちましたが、まだ泥が残っているようです。
秒速の奇跡とは?
相手を信じ、相手も自分を信じてくれることなのでしょう。
他人のために、自分の時間を割く。信じて待ち続ける。それがきっと愛の証なのでしょう。
ちなみに、
自分も高校生時代、課外の一コマを45分だと思って約束したら、
実は100分で、一時間遅れて上履きのまま走った向かいました。
彼女の姿を見た時、私はあこがれの先輩から下僕に落ちてしまいましたwww
貴樹とは?
彼は喧嘩ができないような気がします。転校のせいで、アウェーという意識があったのでしょう。
ちなみに、自分は転校のあと、舐められないように喧嘩をよくしました、噛み付いてでも向かっていきましたけど。
そして、親に対しても文句一つ言わなかったのでしょう。
衝突しそうになると、すぐに自分を殺してしまっていたのだと思います。
明里の引っ越しが決まっても、仲直りしたシーンはありません。
仕事を嫌になったきっかけも、上司との衝突です。
喧嘩したくないから、理沙からのでんわにでない。
会社を辞めると母親に電話した時、
「もう少し頑張れないの?」と言われます。
自分なら切れてしまいます。実際に切れたこともあります。頑張っている人間に頑張れは禁句です。
だから、心を開かい、うわべの優しさ、となるのだと思いました。
だから、私は理沙≒再開した明里だと思ったわけです。
貴樹が救われたのはいつか?
自分は、上司が「いろいろ悪かったな」と肩をたたいたところだと思いました。
貴樹はきょとんしています。あれで、喧嘩しても仲直りできること、
繋がりを保ち続けることができると感じられたのではないでしょうか。
明里にも手紙で、「ほかの男に色目使ってんじゃねえ」ぐらい言えればよかったのかもwww
まあこう考えると、貴樹が完全に立ち直るためには、理沙のもとへ自分から、
関係修復に向かうことなのかもしれません。
2次創作は二度目、一人称の小説は初めて書きました。
如何だったでしょうか?
感情に任せてキーボードをたたいたので、起承転結も何もありませんが、半年以上のブランクがあったので、書けたという事実の方が私にとっては重要です。
ちなみに、エロはありませんw
当初はどこかに投稿して、ここにはセックス有りのものを掲載しようと思ったのですが、よい投稿先も見つかりませんでしたし、やっぱりそこまでやるのは許されないのかなぁと思い断念しました。
というか、セックスシーンと戦闘シーンがないと楽ですw
感想などありましたら、一言でいいので寄せてください。
よろしくお願いします。