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□ ほんの短い夏《序章中編》 □

――7――

 ――7――
 翌日、麻由美と鷹佐は、鷹迫谷の魁鷹寺に赴いていた。ここは榊家の菩提寺である。榊造酒之丞の遺品と幕府からの朱印状などを納めた。
 緩やかな階段を降りていく。階段の左右には、桜の花が咲いていた。見上げると、透き通るような空の青、桜の花びらの薄い紅色の二色しか目に入らない。もの憂く美しい。
 桜の並木は、階段下から小さな池に繋がっている。池の周りには、花見客を当て込んだ腰掛茶屋が何軒も並んでいた。
 二人は、桜の香りにつられて、池の方へまわった。
 桜の下は、花見客で混んでいた。水辺に坐り青黒い水面に寄せ合った顔を映す若い男女、枝の下にゴザを敷き団子を食べる家族、俳句を詠む者、絵を描く者、酒に酔い歌う者、と皆さまざまに興じている。
 人の発する熱気が、生温かく蒸れているようだった。酔うようである。
「ようやく終わりました」
「これで、それがしの役目も終わりです」
「これからどちらに?」
「北へ向かいます」
「そうですか……」
 散る花のように名残惜しい、と麻由美は思う。
――もうしばらく一緒に……。
という思いが無意識に脚に出たのだろう。人混みの流れに逆らうように、歩きが遅れていく。
「足が痛みますか? 少し休みましょう」
 鷹佐は振り返った。爽やかな笑顔を見せながら、気遣いの言葉を投げかけた。
「はい」
 すでに、麻由美の顔は、妖しげに上気していた。鷹佐が手を引くと、抵抗なく従う。

 茶屋の間を抜けて、細く暗い路地を進む。青い空に黒い屋根が高く聳えている。胸に、心細さが滲んでくる。前を歩く鷹佐の背が、冷たく大きく、そして、極めて危険なもののように見えた。しかし、危険を恐れる感情の裏で、煌びやかな好奇心が動いている。
 鷹佐は小さな料亭に入った。中年の女中に小銭を握らせると、すぐに離れへと案内された。表の店を抜けて、渡り廊下を通る。狭いが鯉の泳ぐ池のある風流な庭に人影はない。

「……」
「……」
 酒肴の膳を挟んで、二人は噛み付かんばかりに見詰め合う。
 女中の足音が消えると、それを合図に、鷹佐は盃をあける。そして、いきなり膳を押しのけ、腰を滑らせて麻由美の傍に寄った。
「あなたが欲しい」
 涼しげな仮面を外して、大胆な発言をする。
「わたくしを?」
 男の甘美な言葉が、胸に刺さった。ようやく誘惑された、という不思議な安堵の色が瞳に過る。
「ええ」
眼で頷き、素早く手を取った。
「慣れていらっしゃるのね」
 身を傾けて、腕に身体を投げかけ、湿った声でささやく。
「でもありませんよ」
「初めから、そのつもりだったのでしょ?」
「無論」
 雄々しく頷くと、強く抱きしめた。麻由美の肌の香りが、鷹佐の鼻に触れる。
「ひどい人――」
 麻由美は妖艶に囁く。
「いや……んっ」
 鷹佐は襟元から探って、乳ぶさを鷲掴みにする。そして、軽く喘ぐ唇を奪った。
「んっ、んんっ」
 一瞬で、カッと頭が沸騰する。気が付けば、激しく応じていた。夫以外の男の肌のぬくもりに、心に纏っていた固い鎧が溶けていくようだった。
――落ちる……。
 身体中がふるえ、脳が酔い、心が痺れた。もはやこの快感を言葉では補え切れない。無意識に、麻由美は鷹佐の首に腕を回していた。
「んんんんっ」
 鷹佐は、唇を吸いながら、乳ぶさを襟から引き出す。
「やっ、……やめて」
 麻由美は淡い口調で、拒絶する。その声に鷹佐を抑える力はない。鷹佐は唇を離して、その剥き出された乳ぶさへ貪るように食らいつく。
「なりませぬ」
 背筋を電流が駆け抜けて、反射的に頭を激しく振った。豊かな黒髪が解けて垂れ落ちる。自由になった口は、心のこもらない言葉を紡ぐ。
「なりませぬ、なりませぬ」
 舌先で、何度も乳首を弾かれた。鷹佐の腕の中で、白い喉を仰け反らせて、宙へと叫び上げる。
「もうなりませぬ!」
 繰り返し、言葉で拒むが、その美しい身体は、鷹佐の膝の上に力なく沈んでいく。
「これ以上はッ、もう、もう許してッ」
 鷹佐が裾をさらりと払い、白い素足を肌蹴させる。麻由美は、ただ、もじもじと足を捩じらせている。
 そして、息を呑むほどに洗練された美貌からは想像も出来ない、卑猥且つ下品な毛深い陰毛が現れた。その陰毛は、麻由美の下腹部にびっしりと群生して、大切な部分を丸ごと覆っていた。
「ふん――」
 鷹佐は陰毛に指先でいじった。にやりと笑って、指先でその毛質を堪能する。
「性格のように強情ですな」
「はっ、はぅ、はずかしい……」
 麻由美は顔を手で覆った。
「何も恥ずかしがることはない。ありのままの麻由美殿をお見せください」
 それから、太ももを撫でまわして、ゆっくりと持ち上げていく。
「やめて、わたくし、そんなことするつもりじゃなくてよ」
 赤い媚肉を垣間見せる裂目が露出する。すでに粘液を分泌して、温かく蒸れている。
「そんなところ、なりませぬ。ああ、あうう、アハン」
 外の桜に負けぬほど、鮮やかに頬を上気させて悶える。
「麻由美殿、ここじゃ、言葉は逆さまになるのですよ」
ベトリとその頬を舐め上げて、耳に熱い吐息を吹きかけながらささやく。
「嫌は好き。やめては早く。だめはもっともっと」
「そ、そうなの……こ、困るわ」
 媚びたように、身悶える。
「ああん、だめ」
 顔を秘所へと沈めていく。
「つまり、『もっと』という意味ですか? 分かりました」
 舌の腹でたっぷりと切れ間を抉るように舐め上げる。
「あうっ……ふううう。ち、違うわ。わたくしはそんな破廉恥じゃなくてよ」
 口を大きく上げて、喘ぐ。
「もういいでしょう。素直になりましょう。そうすれば、もっともっと気持ちよくなれますよ」
 そして、剥きだしになっている肉芽を舌先で突いて、唇で啄ばみ、さらに、舌で弾いた。
「ひぃッ!」
 太ももを閉じて、鷹佐の頭を挟み、かつ、上体を捻って、肩を細かく引き攣らせる。
「いっ、いやッ、いやぁーーーん」、
 反射的に背で這い、頭頂部の方へ逃げる。しかし、鷹佐は喰らい付いて、決して離れない。
――舐められると……こんな気持ちよかったかしら……?
 もうすっかり忘れてしまっていた快楽だった。積年の自己抑制で、肉欲が知らぬうちに積りにつもって、腹の底で、得体のしれぬ黒い汚泥になっていた。それを鷹佐の舌が、吸い取るようであった。
――気持ちがイイ……こんなに気持ちイイなんて、信じられないわッ!
 心の中で、堰を切ったように喚き散らかす。しかし、それを決して口に出してはいけない、と誓う。もし出したならば、もう自分を保つことはできない。それを震えるほどに恐れていた。
『立ち花菱』
 こんなにも激しく情熱的な行為だったとは思いもしなかった。
 結婚して性交渉を知った。夫に抱かれた時、幸せな気分になった。精神的に満たされていた。気持ちもよかった。十分に満足していた。だが、自分から求めてまで欲しいと思うことはなかった。溺れる男女の噂を聞くことがあったが、誇張としか考えなかった。
『愛とはそんな急に燃え上がるようなものではない』
 と否定し、
『もっとじっくりと暖め合うものだ』
 と反論した。
 現実に夫と交わるより、裸で抱きしめ合い、互いの体温を確かめ合う方が好きだった。
 しかし、これらが間違いだと今悟った。初めて肉体的な悦びを知った。
――でも、口だけよ……
 そして、これがまだほんの入り口に過ぎないのだ、と気付いて恐懼する。
「ひぃッ……ひぃいいいいい」
 秘唇へ押し込まれてくる舌の刺すような快感。瞬く間に、麻由美は達していく。歯をかみ締め、唇を固く結んでも、悲鳴のような声が洩ら出てしまう。ついには、腰が若鮎のように跳ねるように震えさせた。
「あはぁ、はぁはぁはぁ……」
 肩を揺らして、荒い息を吹き出す。
「気をやりましたね。さあ、本当の思いを口にして下さい」
 鷹佐が股間から顔を上げて、促す。
「ああ……」
 麻由美は瞳を潤ませた。
――い、言えない……、そんなこと、言えるわけない……。
 夫の顔が頭に浮かんだ。
――ああ、あなた……。
 慎ましく楚々とした女、それは夫とともに築き上げてきた美意識だった。
「今日一日だけです。それがしは都を去ります――」
 鷹佐が悪魔の囀りを続ける。
「一度だけ、一度だけ羽目を外しても、誰に知られるわけはじゃない。あなたは何も変わりませんよ」
「ッ……」
 鷹佐の言葉が胸に突き刺さった。
――人に知られなければ、何も変わらない……。
 上妻鷹佐という人間は、麻由美の世界の外側の人間である。
「で、でも……」
快楽と矜持がせめぎ合う。
「明日からまた今迄通りに生きればよいのです――」
 鷹佐がささやく。
「ただ今この瞬間だけ、すべてを忘れて、有りの侭のあなたを、自由に振る舞えがよいのです」
――ああ……あなた、許して……。
 麻由美の美意識が軋んでいく。
「ああ、もっとして欲しいの。もっといっぱいいろいろしてほしいの……」
 いきなり、真実の声を口走っていた。そして、大きく脚を開いて、いやらしく上下させている。麻由美を全身でうったえている。女心の切さを……、雌の餓えを……。
「やっと素直になりましたね。かわいい女(ひと)だ」
 鷹佐が覆いかぶさる。
「はああああっ」
 その安堵感が、大きな溜め息となった。
「早く、早くして……。じゃないと狂っちゃう……」
「はい、承知いたしました」
 鷹佐は、滝のように蜜を垂れ流す穴へ、栓をするように先端を押し込んでいく。
「ひッ……あぁぁあぁ……」
 それだけで、麻由美は、恥も外聞もなく喘ぎまくった。
――いまだけ、いまだけよ。明日になれば、また変わらない日常がやってくる……。
 今ここは二人だけの世界。誰も知らない時間。鷹佐が去れば、永遠に封印されてしまう思い出なのだ。
 二人は貪るように口付けをかわす。それは野獣そのもののであり、欲望に狂った姿だった。
 骨が軋むように、腰を激し打ち付ける。膣孔の奥へと抉っていく。脳の芯までも痺れていく。
「だめ、だめ、だめ、だめになっちゃう……」
 朦朧とする意識の中で、両腕を胸の前で畳み、まるで子猫のように泣きじゃくった。
「あっ、ああーーーん」
 手の指の先まで、鋭い電撃が貫いた。髪の毛の一本一本までもが、甘美な快楽に痺れてしまう。
「ああんっ…だ、だめぇ……すごっ……すごい……こ、壊れちゃう……」
 肉に狂う、麻由美はその意味を実感した。理性も、羞恥心も、背徳感も、何もかもが、肉欲に飲み込まれて、支配されていく。
「うっ、うっ、あぅわ……アアア……うううッ!!」
 麻由美は爪先を突っ張らせ、背中をそり、白目を剥いて悶絶した。
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Date:2012/05/01
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